「飛騨からあふれるタカラモノ」の発掘を楽しむユニークな会社である株式会社ヒダカラ。ふるさと納税運営代行やネット通販支援事業などを通して、ローカルならではの魅力を発見し、磨いてくれる。
今回は、そんなヒダカラと共に飛騨の米づくりを担うみつわ農園さんを取材。ヒダカラと出会ったからこそ見えた可能性について聞いた。 飛騨地域の農業の未来を元気に照らすべく、ヒダカラ代表の舩坂香菜子さんとみつわ農園代表取締役の畠中望さんは一緒に奔走中。2人はどのようにして、みつわ農園のお米を全国的に人気が出るほどまでに育てたのだろう。
生産者の背中を押すヒダカラとの出会い
みつわ農園は、飛騨の恵みを受けて美味しいお米を育てる農家。十年以上連続で米・食味分析鑑定コンクールで受賞するなど、お米の品質は折り紙付き。近年は飛騨コシヒカリのブランディングや地域の農家を元気づける夢も抱いている。お米農家としてさまざまなチャレンジをするようになったのは、地域商社ヒダカラとの出会いが大きかったという。
「香菜子さん(ヒダカラ代表)はパワーの塊。香菜子さんに頼めば不可能はないように思えてきます」
ヒダカラは飛騨市のふるさと納税事業支援に取り組み、たったの数年で寄付金額を3.5億から19億にまで成長させた。
「飛騨市のふるさと納税をここまでにしたのもヒダカラさんですし、農家をこれだけ発掘して自信を持たせてくれたのは香菜子さん」
「『うちのお米なんて…』みたいに思っていても、香菜子さんは『やりましょう!』と、背中をバンっと押してくれます。すると『よしっ』と思えるんです。私はまさにそうで、香菜子さんに会う前はやりたいことはいっぱいあったのに形にできない状態でした」
畠中さんと舩坂さんが出会ったのは、舩坂さんが楽天在籍時に飛騨市役所へ出向していた頃。舩坂さんは当時、飛騨市のFCL(未来のコミュニティ研究室)を立ち上げることに。その一環として、地域の人口減解決をテーマにしたまちづくり「飛騨市関係人口プロジェクト」や「飛騨市ファンクラブ」などの取り組みを始めていた。
「コロナが発生する2、3年前だったと思います。飛騨市と地域の生産者が一緒に取り組むプロジェクトで、私は飛騨市のお米チームとして関わらせてもらいました」
今では互いに意見を交わす2人だが、当時は“楽天”から来た舩坂さんに気後れしっぱなしだったと振り返る。
「香菜子さんが別世界の人に見えてしまって、なかなか上手く話せなかったんです。何か尋ねればすぐに答えが返ってくるし、香菜子さんの周りだけすごいスピードで時間が流れているように思えました。今も仕事で話すときは、ちょっと背筋が伸びます(笑)」
舩坂さんはその後ヒダカラを創業し、地域を元気にする事業にエネルギーを注力。みつわ農園との伴走は今も続いている。
「ふるさと納税の注文は、月に200件ほど入るようになりました。収穫したお米の半分以上はふるさと納税でなくなってしまうくらいです(笑)。ページや文章、写真など、香菜子さんが考えるお米の見せ方がやっぱりすごいですね」
お米農家のクラウドファンディング初挑戦
地域を元気にするべく飛騨市に現れた舩坂さん。畠中さんにとって、舩坂さんは未知の体験を引き寄せる存在だったといえる。
「関係人口プロジェクトの時に、お米のクラウドファンディングをしたんです。新しいお米のパッケージなどを作るためでした。お米の魅力の伝え方をいろいろ考えたのですが途中で詰まってしまい、私が大泣きしたり(笑)。その中で生まれたのが『万天』というお米。万天ができるまで引っ張ってくれたのはお米チームのみんなと、みんなをまとめてくれた香菜子さんですね」
万天は、お米の美味しさを表す「食味スコア」で85以上を記録。スコアの全国平均値が70~75の中で高い水準を誇る。一粒一粒がしっかりとしており、香りと甘味を堪能できる味わいが魅力だ。万天のスタイリッシュで明るいパッケージには、ふと目が引き寄せられる。
「パッケージはどうやって作るのか、シールはどこで作るか、何もわからないのに商品にしていかなきゃいけなくて、すごく焦っていた半年間でしたね。お米づくりの現場もやらなきゃいけないし、本当に葛藤でした」
クラウドファンディング初挑戦だった畠中さんにとって、戸惑いや不安は決して小さくなかった。
「クラウドファンディングでお金をもらうことが怖くて…。評価がもらえなかったら目に見えてわかるじゃないですか。弱気になって『うちのお米で誰が喜ぶんだろう』『お米はどれも一緒だよね』なんて考えたことも。当時の私に『 そんなことないよ』『これだけの受賞歴だってあるんだから』と、香菜子さんがずっと支えてくれました」
「クラウドファンディングではいろいろな方に応援していただいて、返礼品のお米を送った後もご連絡をくれた方がいたんです。すごく励みになりましたし自信も付きました」
農業とネットショップの両立に追い詰められて
万天に続いてミルキークイーン「白月」も生産したみつわ農園。最近では見た目が特徴的な若玄米「みどり」が人気だという。
「みどりはヒダカラさんに売っていただいています。玄米は茶色い皮をかぶっていますが、精米すると白米になります。早い段階で刈り取ったお米は茶色くなくて、玄米自体が緑がかっているんです。緑色玄米とも呼ばれる若玄米は、茶色くなる前の若い玄米。健康ブームですし、芸能人のMEGUMIさんがSNSでつぶやいてヒットしました」
若玄米がバズる以前、みつわ農園では緑色の玄米は捨てられるはずだった。
「一昨年、少し暑いところで育つ品種が寒くて登熟せず、緑色のお米がいっぱい取れたんです。捨てるにはもったいないけれど売る方法もわからなくて、香菜子さんに相談しました。すると楽天でページを作ってくださって、若玄米がバズったことでうちのも売れるようになりました。おこぼれを頂戴した感じですが(笑)、今ではうちの主力商品です」
若玄米は、あえて早い段階でお米を刈り取る決断をしなくてはならない。未熟といえる状態で刈り取られるため希少性は高いが、お米農家からするとリスクが伴う。だからこそ、ふるさと納税やネットショップという販路拡大、SNSを通した消費者とのコミュニケーションは強みであり安心にもなる。
「以前はふるさと納税の注文が月に10件、楽天の方でも月に1件とかでした。その頃に香菜子さんとの関わりが生まれて楽天のページの作り方とかを教えてもらったんです。ヒダカラができてからはチームで勉強して、みんなで(売り方を)直していったら、ちょっとずつお米が売れるようになったんです。『すごい楽しい!』と思いました」
「でも当時のうちは従業員が3人だけ。私は現場にいるからパソコンをあまり見られなくて、お客さんからの注文をチェックできずにクレームが入ることが何件かあって、『もう無理だ! やめよう』と思ったんです」
楽しさの先に待っていたのは、自分たちだけではやり切れないという難しさ。
「やっぱり私は現場にずっといたい。それでヒダカラさんの方でお米を売ってほしいと相談して、ヒダカラ商店(ヒダカラが運営するネットショップ)でみつわ農園の商品を全て取り扱ってもらうようになりました」
“一人じゃない”心強さをくれる地域商社
クラウドファンディングで感じた支援者の存在、全国的にバズる経験。数年の間にたくさんのチャレンジをしてきた畠中さんに現在の心境を聞いてみた。
「ヒダカラさんと出会う前と今とでは、全く別だなと思います。自分一人だったら見ようともしないし、見ることができなかった景色だと思います」
ヒダカラに対しては、こんな想いを抱いているのだとか。
「売ることを知るようになって、作るだけの農業からお客様のことを考える農業ができるようになりました。ヒダカラさんはすごく丁寧にお客様のところまで届けてくれるので、安心してお米を出せます。私は大雑把でめんどくさがり屋なので、そこを補ってくれるんです(笑)。従業員には大げさだと言われるんですけど、私一人ではわからなかった。ヒダカラさんあっての今のみつわ農園だと思っています」
生産者にとって販路の拡大は可能性を広げる手段だが、生産との両立は負担やリスクを伴う。その負担を軽くし、成功率を高める方法を一緒に考えるのが地域商社だ。
「ヒダカラさんがいなかったら販路ができていないし、販路がなければ量も作れなくて利益も生まれていないので、みんなの給料にも反映できない」
「特に香菜子さんとの出会いは、私の人生で本当に大きいんです。たまに酔った勢いで言うんですよ。『香菜子さんに出会って世界が変わりました』って。現場しか知らない私に、農業を違う方向から見せてくれた人です」
畠中さんにとって、お米づくりを始めたきっかけや原動力は父の存在が欠かせない。そして今では地域に懸ける想いもひとしおだという。その理由を『読むふるさとチョイス』で語っていただいた。
(『読むふるさとチョイス』へ)
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