地域業者記事

地域商社との並走で赤字経営が一新「5年後の話ができるようになった」

「飛騨からあふれるタカラモノ」の発掘を楽しむユニークな会社である株式会社ヒダカラ。ふるさと納税運営代行やネット通販支援事業などを通して、ローカルならではの魅力を発見し、磨いてくれる。

今回は、そんなヒダカラと共に岐阜を舞台にバズる乳製品をつくる牧成舎さんを取材。ヒダカラと出会ったからこそ見えた可能性について聞いた。

牧成舎は飛騨市の老舗牛乳屋。低温殺菌牛乳の美味しさをベースに開発されたユニークなピザやチーズはメディアやSNSで取り上げられ、楽天市場ではランキング一位を獲得するほどの人気ぶり。ところがかつての牧成舎は経営難に苦しむこともあったそう。ヒダカラと牧成舎がこれまでに築き上げてきたものなどを、牧成舎の牧田さんに語ってもらった。

事業者の当たり前を“価値”に変える出会い

飛騨市は地域特産品や観光資源に恵まれたエリアだが、人材不足や地域の経済圏の縮小などの影響で苦境に立つ事業者も少なくない。高品質の牛乳を作り続けてきた牧成舎は、ヒダカラとの出会いで輝きを増した事業者だ。

「牧成舎は自社牧場を持っているんですけど、牧場経営って赤字になりやすいんですよ。一時期、牧場を辞めようかとも言っていました。でも舩坂さん(ヒダカラ代表)から『牧場は続けた方が良い』とお話をいただいたことがあったんです。今では続けてきて良かったと思っています」

牧成舎のこだわりは、絞りたての生乳を低温殺菌し、温度管理をして美味しい状態をキープすること。低温殺菌は時間も手間もかかるが、創業以来掲げ続けてきた「おいしいことを、まじめに、ていねいに」を守ってきた。


「牧成舎は明治30年創業なのですが、それは私たちからすると当たり前のこと。すると舩坂さんが『それはちゃんと言っていった方がいい』と教えてくれたんです」

時代が効率重視、大量生産へとシフトしていっても、低温殺菌の美味しい牛乳をたくさんの人に届けてきた歴史がある。事業者にとって当たり前の営みが、消費者からするとかけがえのない信頼に繋がることを、ヒダカラが再発見してくれた。

地域を元気にする前向きなエネルギー

牧田さんが舩坂さんを初めて知ったのは2018年頃。テレビ画面の中で舩坂さんを見たという。

「舩坂さんが楽天に在籍していたときに飛騨市役所に(出向で)いらっしゃって、それがテレビ番組で紹介されていたんですよ。私は当時、舩坂さんがこんなに長く飛騨にいてくれる人だと思わなくて。でも実際にお話してみると、すごくやる気のある方だったんです」


ヒダカラの舩坂さんは、大学卒業後に楽天に就職。「地方を元気に」をミッションにキャリアを積んできた。楽天に在籍しながら飛騨市役所に出向してからは、飛騨市のふるさと納税事業支援などに注力。たくさんの事業者と出会う中で、牧成舎とも一緒に走り出した。

「電話やメッセンジャーでよく連絡を取り合って、(出品するなら)こういう商品がいいとかを教えてもらったり商品の写真を撮ってくれたり。みんなで『こうしたい!』みたいなことを考えて盛り上がるのが面白かったですね」

舩坂さんのエネルギーから、地域がどんどん刺激を受けるのを感じていた牧田さん。一方で、こんな想いも抱いていたのだとか。

「舩坂さんが倒れるんじゃないかとすごく心配でした。熱心な方なので朝の3時とか4時とかでもメッセージが入っていることも。いつ寝てるのかなと、見ていて心配するほどの活躍ぶりでした」


コロナ禍で牛乳が廃棄に…ピンチを救ったクラファン

牧成舎にとってひとつのターニングポイントとなったのが、新型コロナウイルス感染症拡大による学校給食の停止だった。牧成舎は地域の学校給食に牛乳を提供しており、突然の給食停止で牛乳の廃棄や売上ダウンのピンチに襲われた。

「5、6校に卸すはずだった牛乳をどうしようかとなりました。いろいろな人に相談して、 舩坂さんにも話を聞いてもらったら『キャンプファイヤーでコロナ支援のプロジェクトが出た』と教えてくれて、すぐに申請しました」


「キャンプファイヤーの担当者さんも『 コロナで困っている牛乳屋さんがtwitter(旧X)のトレンドになっているから、すぐにプロジェクトを出すべき』とサポートしてくれました。すると、プロジェクトがバズってテレビでも紹介されたんです」

キャンプファイヤーでは、支援者へのリターンとして牧成舎のこだわり乳製品セットを送付することに。

「飛騨市も牧成舎が困っていることを記者会見で発信してくれたんです。そうしたら10日間で500万円くらい集まって、1300人以上の人が応援してくれました。あんなにすごいことはもう起きないんじゃないかな、と思うほどの反響でした」

目標額50万円に対し、プロジェクトは達成率1000%を超える大成功。実は牧成舎では過去に、クラウドファンディングが失敗に終わった経験があったのだとか。

「以前に失敗したおかげで、掲載ページの元になるものを持っていたんです(笑)。それをコピペしたからすぐにプロジェクトを出せました」


舩坂さんが背中を押し、牧成舎がクラウドファンディングに再挑戦したことで、丹精込めて育てた牛たちの牛乳は廃棄の危機を免れた。

「ちょうどその時、うちで一番伸びていたのがふるさと納税でした。(牛乳が余るなら)ふるさと納税でとにかく安く出品する話もしていたんですが、舩坂さんがポンっとキャンプファイヤーのことを言ってくれたんです。舩坂さんがいなかったらネットショップも今みたいになっていないと思いますし、ありがたいですね」

ヒダカラと広げる可能性、変える未来の景色

コロナという非常事態を一緒に乗り越えた、牧成舎とヒダカラ。牧田さんにとってヒダカラはどんな存在なのだろう。

「ヒダカラさんがきっかけで、うちはネットショップを開きました。ヒダカラさんが飛騨ネットショップ倶楽部支援塾というものを開いていて、ネットショップをどうやって運営していくかを一緒に考えるんです。それまでは自社のショップだけだったんですけど、今ではネットショップがふるさと納税並みに売れています」


ローカルの事業者が全国を視野に入れて動くとき、期待と共に不安も大きくなるのが当たり前。ヒダカラはそんな事業者にとって頼れる存在のようだ。

「舩坂さんが来てくれてから、ふるさと納税の寄付金額が2倍になりました。それからも成長していて、今ではふるさと納税が売上の約3分の1を占めています。金額もですが、牛乳は薄利多売になりやすい商品。薄利多売の部分が減って、経営も大きく変わりました」


「社内一丸でふるさと納税やネットショップを頑張るために、みんなの考え方や働き方も変わりました。私もふるさと納税やネットショップの業務を大切にしています」

舩坂さんとの出会いやこれからの牧成舎を振り返ると、牧田さんが目を細めた。

「それまでは1週間後、2週間後どうしよう…みたいなことも結構あったんですけど、今はこれからの投資とか次にやりたいこととか、先が見える会社になりました。これもヒダカラさんのおかげかなと思っています。5年後何しようという夢もできて、みんなの未来が明るくなった感じがします。私は舩坂さんのファンなので、これからも活躍が楽しみです」


牧成舎の低温殺菌牛乳へのこだわり、バズる商品を生み出す秘訣などの理由を『読むふるさとチョイス』で語っていただいた。
(『読むふるさとチョイス』へ)

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