中間事業者取材記事

「リモート」×「ローカル」に勝機あり!秋田の埋もれた名産品にあたった光

株式会社ウィルドリブンは、楽天出身者5名を擁する地域商社。秋田県や宮城県、山形県、群馬県などからふるさと納税事業を受託し、自治体の発展をサポートしている。「リモート」と「ローカル」を組み合わせた「リモーカル戦略」を生み出したのは、地方の魅力発掘と人材配置を両立させるため。ふるさと納税支援事業ではお届け時期の調整サービスを開始し、事業者と寄付者の双方が幸せになれる事業支援を展開。ウィルドリブン代表取締役の高田要一郎さんに、リモーカル戦略の強みや事業者と寄付者のwin-winな関係作りについて伺った。

リモーカル戦略で事業者の最良のパートナーに

ウィルドリブンの事業の特徴は「リモーカル戦略」。リモートで多彩な人材のスキルを活かしつつ、ローカルに寄り添って地域に貢献するビジネスモデルだ。リモーカル戦略を駆使することで、ふるさと納税事業のスピード感やクオリティの向上を図る。

「ウィルドリブンを起業したとき、北秋田市のふるさと納税事業のウェブ制作は、宮城在住の知人にお願いしていました。秋田県内で受託が増える中で、地場に張り付いてやる業務と、張り付かなくてもできる業務があることを実感したんです」

ウェブ制作は楽天店舗運営の経験を持ち制作スキルの高い人材を中心に採用し、商品の魅力を伝えるノウハウを発揮してもらっている。楽天のショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞した店舗出身者も複数在籍しており、首都圏であってもなかなか採用できない人材をフルリモートという働き方を活用しているからこそ実現できている。

「楽天の後輩や同僚に声をかけていったんです。リモートとローカル張り付きのハイブリッド型で、他ではない強みを出していけると考えました。今は元楽天の社員が5名います」

コールセンターとシステム開発部門は秋田に集約した。高田さん自身、楽天のECショップ運営に携わった経験があり、ECに関する知見は十分。地域に熱心に足を運び、事業者と密なコミュニケーションを取ることでローカルなサポートも実現した。

比内地鶏の販売会社がコロナ禍で販売不振に苦しんでいた際は、ふるさと納税返礼品のラインナップを拡充し、比内地鶏のあらゆる部位を楽しめるように工夫。申し込み金額は18倍以上に成長し、今も継続した売り上げを得られるように。

「私たちは提案者として事業者さんに寄り添って、一緒に事業を引き上げていくところをすごく大事にしているんです。弊社では営業のことをFNC(ふるさと納税コンサルタント)と呼んでいます。楽天でEコマースコンサルタントをECCと呼ぶところからきているんですけど(笑)」

ふるさと納税事業支援に携わるようになり、地域との関わり方ではこんなかたちを目指しているそう。

「楽天ですごく楽しかったのが、出店者さんの事業の拡大や変革などの節目に当たるタイミングに立ち会うことができたことです。出店者さんと共に一生懸命事業に向き合っていくことを通じて、出店者さんが機を掴んでいくための『パートナー』として見てもらうことができ、少しかもしれないですが事業発展に貢献できたことが嬉しかったんです。地方には名が知られていなかったとしても、社長さんや社員さん、商材やビジネスモデルが面白い会社がたくさんあります。そういう会社が良い「パートナー」に巡り会えたとき、次のステージに進むような変化が起こる。私たちはそんな時期を事業者さんもたらすことができる『パートナー』になりたいと思っているんです」

事業者と寄付者がwin-winで幸せに

秋田県といえば日本有数の米どころ。高田さんは楽天時代にお米の企業のサポートをしていたこともあり、ふるさと納税でもお米の返礼品に力を入れてみることにした。

「地場の2つの農家さんとお話しをしました。どちらも小売りに理解があって、『いいよ。頑張ってみな』と力を貸してくれたんです。ふるさと納税にお米を出品してみたら、申し込みがたくさん来るようになりました」

インターネットでお米を売る際、まず意識したのはスピード感とバリエーションの充実だったそう。

「できるだけ即納するところから始めました。それから量や定期便のバリエーションを増やすことに力を入れたんです。以前はお米の返礼品は6kgの企画ひとつだけでした。それを5kg、10kg、15kg、20kg……最大100kgまで選べる企画やページを作成。100kgを申し込みしていただける寄付者さんもやっぱりいらっしゃるんですよ。大容量の定期便を申し込まれる方もいますし、支援施設に届けてほしいという方も」

「すごくシンプルに言ってしまえば、他の人たちが大変だからやらないところを丁寧に全部拾い上げて集めたんですよね。会社を始めた当時は私もコールセンターの要員として対応していました。定期便を申し込んだ寄付者さんから『無くなりそうだから前倒しでお届けしてほしい』というご要望もあれば『まだ消費しきれてないから、もうちょっと後に届けてほしい』ということも」

返礼品のバリエーションを増やすということは、それだけ管理や調整にかかる手間暇も増える。

「楽天時代も即納すれば売れるという傾向はあったんですけども、何でもかんでも早く届けばいいわけじゃなくて、欲しいときに届けるのが大切。ご要望にうまくハマるサービスを作れば人気になるんじゃないかと考えて、お届け時期調整サービスとお届け周期調整サービスの二つを考案しました」

寄付者への対応を充実させるほか、事業者を守ることの重要性も痛感したという。

「お米にカビが生えたとか虫が湧いていたというお問い合わせが結構あるんです。いつ届いたかを聞いてみると、半年以上前のお届けだったりします。適切な保存環境でないとどうしても虫が湧いたりカビが生えたりするんです。農家さんは代わりのお米を送ってあげようと仰ってくれたので、そこに甘えていたこともありました」

「ですがちょっと違うかなと。このままでは寄付者さんも農家さんもお互い幸せじゃなくなってしまうなとも思いました。農家さんが一生懸命作ったお米を、寄付者さんに美味しいうちに食べ切っていただけるにはどうしたらいいのかを意識するようになりました。そういう想いから時期調整と周期調整のサービスを大切にしています。こうした顧客管理や発送の調整は非常に手間がかかるので、事業者さんがひとりで行うのは厳しい。ふるさと納税の役割分担の仕組みがあるからできているかなと思います」

事業者を勇気づけ、共に一歩を踏み出す

ふるさと納税活用の真っ只中にある秋田県とウィルドリブン。さまざまな事業者と知り合う中で、高田さんは秋田にどんな魅力と課題を感じているのだろう。

「秋田には原石みたいなものがいっぱいあるんです。ただ、そこに付加価値を載せるのが下手なようにも見えます。秋田の人たちは(それを)奥ゆかしいと言いますけれども、今は人口減もあって、後継者問題などで事業を畳む会社が少なくありません」

秋田県の人口は県全体で約91万人。高齢化率は約40%に迫っているのが現状だ。

「秋田は時間の流れがゆっくりですし、豊かな地域だと思うんです。東京だと次々と新しいものが生まれてスピード感が違いますよね。そんな風に勝負を仕掛けていかなくても、満たされて暮らせていたんじゃないかな。ですが県内で事業を継続していくには、商圏や消費が小さくなり過ぎているのかもしれない。かといって外に出ていこうとする人たちは少ない。そうした地域にとって、ふるさと納税は戦いやすい制度なんですよね」

「楽天で働いていたときに県別の出店店舗売上合計を見てみると、秋田県は全国でも後ろから何番目という地域でした。EC事業を展開する企業も非常に少なかったです。ですが、ふるさと納税を活用すると、弊社のような組織が自治体や事業者さんの不足しているスキルやノウハウを補うことができ、商圏を全国に広げることができます。同時に、事業者さんに意識を変えてもらう必要もあると思っています」

売る相手を地域に限定せず、全国に広げる。目標に向けた事業者とのコミュニケーションは真剣そのものだ。

「ふるさと納税は通販とは違うんですよね。見た目は通販っぽいですが、事業者さんは費用がかからず参画でき、自治体さんや弊社のような会社が運営の大半を実施してくれるます。それでいて全国に自社商品を届けられる仕組み。需要も非常に大きいです。せっかく良いものを作っているんだから、ふるさと納税を活用しないことは大きな機会損失だということを事業者さんに理解してもらいます。『まず、ふるさと納税で一歩踏み出しましょう。返礼品企画などは私たちがサポートして作ります!』と伝えています」

秋田の原石をさらに輝かせるために、ウィルドリブンがこれから目指すかたちとは。

「社名にウィル(意志)という言葉を入れているのですが、『意志あるところに道は開ける』ということを信じています。地域の事業者さんや自治体さんの熱意、頑張りがより大きな成果に繋がっていくよう、私達の意思の力でさらに加速させ、地域を盛り上げていきたいですね」

事業者、自治体、寄付者、そして地域商社のような支援者それぞれの意思が相乗効果を生み、地域を盛り上げる。ウィルドリブンはリモーカル戦略を展開しながら、みんなで幸せになれるユニークな支援を生み出していくのだろう。

地域は“ギャップを埋める意志”でもっと良くなる、という高田さん。その理由を『読むふるさとチョイス』で語っていただいた。
『読むふるさとチョイス』へ

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